カウンセリングと医学的治療は補完し合う関係
異なる側面から関与する補完関係
カウンセリングと医学的治療は決して競合関係ではありません。薬物療法を中心に症状の改善を試みる医学的治療は現代医学の成果であり、症状が進行し医学診断がなされたうつの回復のためには欠かせません。
また、その一方でその人の心を中心とした全人的なアプローチによりうつの回復を援助するカウンセリングは現代の臨床心理学の成果といえます。
共にうつが回復していくプロセスに異なる側面から関与し、それぞれお互いが補完し合える関係にあるといえます。
医学的治療はまずは必要
うつは進行すると自律神経系の変調をきたすなど、気持ちの落ち込みだけでなく明らかに生理的な変化を身体にもたらします。また、うつが遷延化してしまうと脳(という器官)に気質的な変化が見られることもあるそうです。このように身体化することにおいては医学的なケアが必要となるということは明らかです。つまり医学的治療は必要なのです。
それでは薬物療法を中心とした治療だけで充分なのでしょうか。純粋なる肉体のケガなどとは違い、うつが本当に回復するには、その人の環境との関わり方、物事のとらえ方や信念などの心理的な特性、ひいてはその人の生き方までをも含んだ全人的なテーマが関係しています。そこは薬物では扱えない部分だといえるでしょう。
うつになった人の心理的な変遷とこころのケア
うつ状態になると、今まで出来ていたことが一時的にも出来なくなったり、社会的な活動の第一線から一時的に退くことを余儀なくされたりします。当初は自分に何が起きているのか理解できずに当惑し混乱するかもしれません。それは自然な反応です。
そして少し時間が経つと、この先への不安や絶望感、孤立無援感にさいなまれたり、様々な気持ちが湧いてくることもあるでしょう。(そして、おそらくご家族も、少なからず同じような気持ちに陥っているかもしれません。)
しかし、こうした心を一人で抱えることなく、カウンセリングによってひとつひとつの気持ちがケアされ、うつ状態になるに至ったことやこれからのことなどを、心の専門家と共に一緒に考え、しっかり取り組むことによって回復が促進されていきます。
その時に得た気づきは回復した後にも再発を予防する力を高めることでしょう。今後は同じストレス状況になったとしても、心の柔軟さを獲得したことで、以前とは違ったものとしてその状況を受け止められることでしょう。
さらに、カウンセリングに取り組むことで得られた気づきは、これからの人生により豊かなものをもたらすかもしれません。
(『うつの方に向けたお話 (5)』につづく)