躁うつになった方へのお話

精神科病院で常勤心理職として何年も臨床の経験してきた臨床心理士である私が、躁うつの状態と気分の安定へのポイントを、できるだけ分かりやすくお話します。

躁うつの状態とは

気分の落ち込みを自覚して、うつ病かなと思って病院に行ったら、これまでの生育歴を確認していく中で躁うつ病と診断される方が少なくありません。躁うつ病は、人生の生きている時間軸の中で気分の落ち込むうつ状態の時期と気分の高揚するそう状態の時期が繰り返し表れる状態です。

その成り立ちはまだ判明していないとされていますが、一般的にはうつ病の成り立ちとは違うと理解されているようです。実際に医学的な治療において処方される薬は、抗うつ薬ではなく気分安定薬が中心とされています。それによって(うつの気分を持ち上げることを目的とするのではなく)躁状態もうつ状態もある程度の範囲に落ち着かせることを意図しています。

躁状態の行動

躁うつの方はご自分がそう状態にある場合には、自分でそれを自覚しにくく、また軽度の躁状態である場合には周囲にも気づかれにくく、高揚した気分のままに行動をしてしまう可能性があります。ギャンブルにはまったり高額な買い物をして散財し、経済的に難しい状況になる場合もあります。また、不機嫌な高揚感に心が振り回され、それを紛らわせるために過食をしてしまったり、怒りやすくなったり、自傷行為をしてしまう場合もあります。

躁うつの方が、(躁状態を伴わない)うつと診断され、抗うつ薬を服用し続けていると、気分の高揚が強まり、こうした行動化が強化されることもあるため、適切な診断と服薬が望まれます。

気質的要因、環境的要因、症状化と安定

躁うつの方が症状を呈するのは、(躁状態を伴わない)うつの方以上に、環境からのストレス因よりも気質的な要因がより関連していると言われています。

それでは環境におけるストレスな状況は関係ないかというと、そういうわけでもないようです。たとえば、時間の枠にしばられ、細かな時間単位でコントロールされると、気分の振れ幅がより大きくなって不安定になりがちだと言われています。反対に、生きていく中で枠を緩めて、その方なりのペースで活動することが出来るならば、気分の振れは落ち着いてくると言われています。

医学的治療とカウンセリングは補完し合う関係

躁うつにおける気分の安定には、医学的治療とカウンセリングはお互いに連携し補完し合う関係にあります。自我(意識的な努力)でコントロールできる範囲を超えている気分の振幅を安定させるには医学的治療による服薬が基本的な対処方法であり、その有効性は明らかです。

そしてそれを前提とした上で、さらにカウンセリングによる関わりでは、定期的にその時のご自身のコンディションを一緒に振り返ることをとおして、心身への気づきの力を高め、気分や調子の変化をつかめるようになることを支援します。また、今抱えている心理的な問題や環境面におけるストレス因とうまく折り合いをつけていけるよう関わることをとおして、安定を維持していくことに貢献します。

躁うつの方に向けたお話 (2)につづく)