うつが再発しないために

ところで、うつが再発しやすい方はどういう行動パターンをとりがちなのでしょうか。かつて調子をくずした時の状況と同じことを繰り返してしまっているのかもしれません。

最初の兆候が起きた頃を思い出す

初めてうつになった時にどのようなこと(ストレスなど)があったのか、その頃に心身に変調をきたした最初の兆候はそのようなものであったか、回復していく中でこれらのことを振り返り、そこから繰り返さないためには何が必要かをご自分の経験から学び、自覚していくことが、再発を防ぐためにはとても大切なことだと思います。

環境や状況を振り返る

初めに調子をくずしてしまった時の状況を振り返り、その時に起きていた状況を繰り返さないことが大切です。それはもしかしたらやむを得なかった状況に追い込まれてしまった結果だったかもしれません。その時には、その環境から適切に逃げることを学ぶ必要があるかもしれません。また、その状況を引き起こしたことには、自らの思考や行動が大きく介在していたかもしれません。その場合には、自分自身の内面を振り返り、適切なものに変容させていくことを学ぶ必要があるかもしれません。

認知パターンをつかむ

自らの認知や何らかの行動パターンが、うつ状態に陥ったことに関係していたでしょうか。自分が物事や世界をどう認知しているか、物事を必要以上に否定的に見たり極端な考えをしてしまう傾向や、対人関係の中で必要以上にイライラを感じたり卑屈に感じたりする傾向はないでしょうか。完璧主義できっちりしないと気が済まないとか、他者を優先して自分を後回しにしてしまう価値観など、ストレスを自ら増やしてしまうようなパターン化した行動傾向などはなかったでしょうか。結果として気持ちを落ち込ませるような、繰り返される思考や行動パターンがあるとしたら、改善する余地がありそうです。

心身の兆候は不調のサイン

また、調子をくずし始めた頃の最初の心身の兆候(たとえば頭痛が酷い、下痢をする、早朝目が覚めるなど)を思い出しておくことは大切なことです。人はそれぞれ個別に身体のどこか弱い部分があり、ストレスが掛かるなどで調子が悪くなり始めの時に、まずはそこに兆候が出始めるものです。そのため、以前に調子をくずし始めた時の最初の兆候を把握していれば、また次に調子をくずし始めた時のサインとしてその兆候を掴むことができます。その兆候が現れたら最優先で心身を休めるなど、それ以上に悪くなることを防ぐための行動を選択することができます。

兆候から活動の限界を知る

不調になり始めの時に現れるその人に固有の兆候は、その時点でのその人の活動の限界を表しています。しかしそれを敢えて意識しないと、その重要性を頭では理解していないかもしれません。人の思考と身体を分けて説明すると、思考というのは疲れることはないので、いくらでも活動ができる気でいます。そして、今まで生きてきた中で体力が一番充実していた若い頃のやれていたパフォーマンスの記憶を覚えています。そのため、無自覚でいると、頑張ればその時のパフォーマンスまでやれるだろうとどこかで思っています。

しかし、身体の立場からは加齢による自然な衰えや、不調によって、若い頃に経験した最高のパフォーマンスを発揮できないことは普通にあることです。身体は有限のエネルギーであって、疲労もします。こうして、思考と身体のギャップが起こるのですが、思考が身体の調子に無自覚であれば、限界を超えて活動をした先には、エネルギーが枯渇してまたうつ状態に陥ってしまうかもしれません。

再発防止は自分の身体に教えてもらう

したがって、うつが再発しないようにするために、思考は常に身体の様子に耳を傾けて、事前に理解している自分の不調の兆候がその時々に起きているかどうかを身体から教えてもらうのだということを学ぶ必要があるのかもしれません。

カウンセリング場面では、うつが回復していく中で、早く社会復帰したいという思いを尊重しながらも、無理をせずにじっくりと一歩一歩回復していくことを促進する関わりを行っていきます。結局はそれが一番の近道だったりします。それと同時に、うつになった時の様子をあらためて振り返りながら、そこから再発をしないためにはどうしたらいいかを、一緒に取り組んでいく関わりを行っていきます。それこそが一番大切なことなのだと思います。

うつの方に向けたお話 (4)につづく)